中国人エリートは日本人をこう見る

中国人エリートは日本人をこう見る を読みました。

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面白かったです。

本書はあくまでもエリート中国人で、80年〜90年代生まれの
若者たちへの個人インタビューに基づいて書かれています。
中国にて一人っ子政策のもと、恵まれた環境にいる裕福な
80年代生まれを八〇后(バーリンホウ)、90年代生まれを
九〇后(ジオリンホウ)と言いますが、まさに彼ら彼女らが対象になっています。

大筋としては、この若い世代にはいわゆる多くの日本人が持っている
中国人観と異なる考え方と持っている、そしてそれは主に日本に好感を
持っているというというものです。
もちろん本インタビューは日本に留学している学生や日本の企業に就職している
方が主なので、その傾向が顕著であるのはある意味当然なのかもしれません。

気になった項目は以下
靖国参拝をした小泉元首相が、リーダーシップがある人物として人気
・日本人は倫理観が高く、東方文化の神髄が残っていると感じる
・ジャニーズなどの日本のアイドルに多大な影響を受けている
・明治維新というアジアで稀なる革命の成功を収めている日本を成功のお手本として学ぶ
・安全、清潔でこんなにいい国はないと感じている
・中国のようにコネと金がないと物事が進まないということがなく、フェアに評価される国である
・2010年にGDPで中国が日本を抜き、世界第二位となったことに関して
 浮かれているような中国人はろくにいない(実生活にその恩恵を感じない)


などなど。
一般的に我々が持っている中国人の日本人観を覆すようなことが書かれています。

インタビューで特に興味深かった部分を抜粋します。


(中略)初めて日本を強く意識したのは中学二三年生頃に受けた歴史の授業がきっかけだったという。
それは試験に出たこんな課題からだった。

「康有為の百日維新(※)は失敗したのに、日本の明治維新はなぜ成功したのですか?」
 ※立憲君主制樹立を最終目標とする改革、1898年に実施を試みるが西太后の反感を買い失敗

また、「第二次世界大戦後、日本経済がいち早く立ち直ったのはなぜですか?」という質問もあったという。

(中略)中国の歴史の授業ではフランス革命など七大革命を学ぶことは大きなポイントで、
中でも明治維新は最重要課題なのだという。
大学受験の問題としてもよく出題される。
孫文辛亥革命も失敗しましたが、中国の革命と比べて日本の革命はなぜ成功したのか。
日本のどこがよかったのかを徹底的に学ばされました」
 呉の記憶では「侍の子は侍、下級武士の子は下級武士で、江戸時代の日本では下から
上に這い上がるルートはなく社会が硬直化していた。
でも、腐敗が進んだ江戸幕府の臨界点は近づいていて『日本を変えなければいけない』という気運が高まり、
大きなうねりとなっていく中で
坂本龍馬のような傑出した人物が現れ、革命を成し遂げることができた」と学んだという。

(中略)「中国人は一人ひとりは強いけれど、集団で力を発揮する能力は弱い。日本では、
中国は愛国教育によって若者に反日意識を植え付けたと
言われているそうですがそんなことはありません。
ひとついえることがあるならば、私は愛国教育によって日本人に興味を持ちました。
だから八〇后世代が反日的だなんてこと、私は絶対に信じません」


あくまでもインタビューに答えたエリート中国人の意見でありますが、なんだか今まで持っていた中国人観を
覆される感じがしますし、逆に日本という国に大して誇りを感じる気もします。
八〇,九〇后世代は中国13億人中の3億人以上を占め、今後の中国の中枢を担うことは間違いありません。
私とほとんど同じ年の人達が自分のしっかりとした考えを持ち、行動をしていることに、
自分自身危機感を抱いたのは言うまでもありません。


尚、中央公論で著者の(恐らく)本書の元となった記事を見つけました。
内容や文章の順、細かには違いがありますが主旨は伝えているかと。

http://www.chuokoron.jp/2010/10/post_34.html