超マクロ展望 世界経済の真実

「超マクロ展望 世界経済の真実」を読んだ。
経済に関しては勉強はこれからだな、といった私にとっても
本書は大変面白かった。
対談形式で話しが進んでいくので大変読みやすい。
経済初心者の方にも丁度よい。

【概要】
資本主義は、実物経済が飽和して利益が出なくなると、
商品を金融化し、金融業で利益を得るようになる。
そして現在、その金融業でも利益を得ることができなくなっている。
リーマンショックはその結果である。
既存の形で利益を得られなくなった今、新しい経済成長の形が
求められている。

◆◇

2001年~2010年の10年間で、金融機関の増加利益は
全産業の84%と、驚異的な割合を誇っている。
アメリカの労働人口の内、金融機関で働いている人は5.3%しかいないため
20人に1人が利益の半分を稼いでいることになる、とのこと。
‐これを読んで金融業の給料が多いのに納得。

日本は戦後60年間で1500兆円の金融資産を実物経済で作りだした。
‐「ものづくり日本」を威力を感じた。
ただ、95年以降、利益の出なくなった実物経済の穴埋めのため
金融経済化を進めた欧米は、95年から金融危機が起こる08年までの
13年間で100兆ドル(1京円)の資産を作りだしたという。
‐再度、金融業の給料が多いことに納得。

今まではある土地を支配するために軍事力が行使されてきたが、
土地支配が飽和した今、軍事力は世界経済システムを維持するために
用いられるようになった。
軍事力行使の目的が陸地の獲得から、経済システムの管理へと
変わってきている。
‐ものごとが飽和していくと、さらなる利益のもとへ、人間の進歩、
欲望というものに歯止めはきかないものか。

ジョバンニ・アリギによると、世界資本主義の歴史において
覇権国で実物経済が行き詰ると金融経済化が必ず起こっている、
要するに覇権国の経済が金融化していくと、その形態での経済支配が
終焉に近づいているということが言えるそうだ。
‐まさに今がそう。

日本国内の実物経済を見ても、人々の需要は飽和状態であり
買い替えでしか、物を買う必要がなくなっている。
今までの、とにかく消費を促す戦略だけでは、市場を大きく
拡大することはできない。

◆◇

ではこれから私たちはどのように生きていけばいいか。

歴史的に見ても、イギリスなどは空間の支配と同時に、
そこに新しいルールを確立することで利益を上げることができてきた。
今後も同様に、産業の自由化を推し進めるのではなく、規制というルールを
作ることで、その中で利益を得ていくことが可能ではないか。
規制こそが市場を作り出し、新しい利潤を生みだす回路になっていくと
考えられる。(例:環境市場における環境規制など)
‐上記の視点で今後のビジネスを考えていくのは非常に有効なのでは
ないかと思う。

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)